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研究室レター

チャレンジとこども

須永 美紀教授
専門
幼児教育学
保育学

こどもは好奇心と行動力に満ち溢れたチャレンジャーです。ここでは、特に3歳未満の低年齢のこどもにフォーカスしましょう。

私が「子どもってチャレンジャーだ!」と強く思ったのは、大学院生の時に乳児院にフィールドワークに通っていた時です。1歳のJくんが私の前でストロー落とし(ストローを穴の開いた容器のフタから差し入れて落とす遊び)をしていました。ストロー落としはその時のJくんのお気に入りの遊びで、毎日のように繰り返し遊んでいました。その日はこれまでのものとは違う、ちょっと難易度の高いストロー落としにチャレンジしていました。何度もストローを穴のところに持っていって入れようとしますが、なかなか入りません。とうとうJくんはストローを放り出して手足をバタバタさせて怒り、泣きながら私の方に歩いてきました。私が抱っこして「残念だったね~。Jくん頑張ってたのにね。」と声をかけていると次第に泣きやみ、しゃくりあげながらも私の腕から出て、またストロー落としを始めます。「できない→癇癪を起こす→泣く→抱っこしてもらう→また同じことに取り組む→できない・・・・・」を繰り返していましたが、とうとうJくんは新しいストロー落としを成功させました。その時、Jくんは私の方を見て満面の笑みをうかべ、パチパチと手をたたき一緒に喜びあいました。この時、私はあきらめずにうまくいく方法を探り、やり遂げる彼の姿にとても感動したのを今でも覚えています。

 こどもは、自分が興味・関心を持ったもの、「面白いな」「なんだろう」「やってみたい」と思ったものに近づき、触れ、やってみようとします。そして、自分の力を試すようにどんどんチャレンジしようとします。Jくんのように、やろうとしたことがうまくできないことがあっても、あきらめずにどうしたらうまくできるかを考える姿もあります。自分がやりたいことができる、うまくいかないことの解決法がわかるというのは、こどもにとって「できる自分」を実感できる瞬間でもあり、こうした「できる」「わかる」の積み重ねが有能感や達成感につながり、自己肯定感、あきらめないで頑張ろうとする心などの育ちのためにも大切です。チャレンジはこどもの内面の育ちにも大きく影響するのですね。

 こどものチャレンジを支えているのは大人の存在です。大好きで安心できる特定の大人がいることで、こどもは大人から離れて外の世界に出て行きいろいろなことにチャレンジできます。そして、疲れたり、怖い思いをしたり、不安になったりすると、今度は安心できる大人のところに戻って慰めてもらったり、安心を取り戻したりして気持ちを立て直したりして、また外の世界に向かっていきます。大人は、子どもがいろいろなことに興味を持ち、外の世界で思い切りチャレンジできるように見守ったり、励ましたり、力づけたりできる存在でありたいですね。