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研究室レター

非認知能力とこども

石川 悦子教授
専門
カウンセリング
教育臨床心理学

今回は、非認知能力を取り上げます。ヒトの能力は「認知能力」と「非認知能力」の2種類に大きく分けて捉えることができます。「認知能力」とは、読み書きや計算といったIQ(Intelligence Quotient知能指数)に代表されるような数値化できる知的能力のことです。IQは、こどもの能力を把握する上で参考にしやすい指標のひとつと言えます。一方、「非認知能力」とは、認知能力以外の能力を広く示す言葉で、数値化することが難しい内面的なスキルを指します。具体的には「目標を決めて取り組む」、「意欲をみせる」、「新しい発想をする」、「周りの人と円滑なコミュニケーションをとる」といった力のことで、こどもの人生を豊かにする上で大切な能力であると言えます。

また、「非認知能力」をさらに2つに分けて捉えることもできます。まず、自己肯定感、自制心、自信、主体性、粘り強さ、メタ認知(客観的判断力)などの「自分に関する力」で、これはこどもの発達にとってとても重要な‟こころ“といえます。そしてもう1つは、社会性と呼ばれる力で、共感性、協調性、道徳性、思いやりなどの‟人と関わる力”です。これらの力は社会情緒的スキルともいわれ、乳幼児期に身につけておくと、その後の小学校生活をはじめ社会への対応力につながり長い人生を幸せに送ることができると言われています。日本の幼児教育は、これまでこころの教育を大切にしてきました。しかし近年は読み書き、計算といった知育教育がやや重視されがちで、不登校やいじめ問題の増加などから、さまざまな社会的課題の増加を背景に「非認知能力」が注目されるようになっています。非認知能力が身についていくためには、大人が安全基地となって、こどもが主体的に夢中になって遊べるような環境づくりが大切です。