検索

研究室レター

外国語とこども

松﨑 真実准教授
専門
保育学(幼児教育分野)

昨今、早いうちに子ども達に外国語を身につけさせたいと思う親が多いそうです。ネイティブのような発音を目指し、胎教として英語を流すこともあるそうです。このできるだけ早くというのは、学習の臨界期を過ぎると、その言語が完全に習得できないという仮説のもとに成り立っています。この仮説の元となるのは母国語の習得の研究です。1967年、Lennebergが後天性の小児性失語症の言語能力回復具合から母語の臨界期の存在を証明しました。小児性失語症は発症年齢が上がると失語症から完全に回復することが難しいと言われています。そしてその年齢は大体12歳~13歳であるとしました。つまり、母国語は思春期を超えると完全な習得は難しいのです。しかしこれは母国語についてのみで、第二外国語については証明されていません。

日本の英語の早期学習はどうでしょうか。英語を幼い時から習っていても英語が苦手だという学生もいます。その一方、中学生から英語を始めても、海外で働くほど上手に使いこなす人もいます。実は日本のように日常的に英語を使うことが少ない環境において、早期英語教育が効果的であるという研究結果は出ていません。その理由として、インプットとアウトプットの量が圧倒的に少ないからだと言われます。

 好きな洋楽、英語の絵本や映画、また海外への旅行や外国籍の子どもを友人とすること、これらはすぐに英語力に結び付くわけではないでしょう。しかしこれらの経験を通して、英語に親しみ、異文化を楽しんでほしいと思います。特に子ども時代にはこの「好き」こそが一番の学びだと考えています。

 

(オーストラリアの保育園の様子 多国籍の環境)