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研究室レター

障害とこども

守 巧教授
専門
幼児教育学
保育学
特別支援教育学

私は、保育者を対象とするインクルーシブ保育に関連する研修会の講師をすることがあります。その際、多くの保育者から「どうすれば子どもが“すぐ”静かになりますか?」「いざこざを無くす特別で具体的な方法はありませんか?」と質問を受けます。 

しかし、残念ながら「これが答えです!」とお伝えできるものはありません。そこには、子どもの状態やクラスメイトの状態、年齢、子どもと保育者との関係など、必要な情報を整理したり、複数の支援を検討したりするなど、丁寧な保育が必要となります。それほど、インクルーシブな保育には、慎重さが求められるのです。

そうは言っても、インクルーシブ保育には、以下の3つの原則があります。3つの原則をおさえる前に、「大原則」とも言えるべきものがあります。それは、「インクルーシブ保育は、障害がある子ども“だけ”を対象とする保育ではない」ということです。障害がない子どもにとっても意味がある保育なのです。したがって、インクルーシブ保育の対象児は、「全員」となります。

(ⅰ)できる限り同じ場所で生活し、遊ぶこと

(ⅱ)子どもの状態に応じて保育のあり方を修正していくこと

(ⅲ)保育を具体的に考えていくこと 

これらはお互いに影響を与え合いながら、実践されていきます。まずは、(ⅰ)のように、どのような障害児であってもクラスの一員として受け止め、可能な限り同じ空間で生活することを目指すのがインクルーシブ保育と言えます。

次に、(ⅱ)のように柔軟に保育の在り方を修正していく必要があります。ここでいう、子どもとは、先述したように、障害がある子どもと障害がない子どもの両方です。

さらに、(ⅲ)で示した通り、抽象的で具現化ができないような保育を半ば「夢想」に近い形で多く検討しても実践に落とし込めないと意味がありません。具体的に考え、できそうなことからはじめるのが良いのです。

このように、原則をおさえたうえで、子どもたちと一緒に悩み、楽しみ、ときには失敗をしながら取り組む「営み」すらもインクルーシブ保育と言えるのです。