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研究室レター

仏教とこども

林 隆嗣教授
専門
インド学·仏教学

いまから2500年ほど昔、インドで誕生した仏教の開祖であるお釈迦様の言葉を集めた経典には、次のような言葉があります。

「一切の生きとし生けるものは、幸福であれ、安穏であれ、安楽であれ。」『ブッダのことば』(中村元訳、岩波書店)

仏教の寺院が経営する幼稚園や保育園は日本各地にたくさんあって、みなさんの中にもこどもの頃に通っていた園が仏教系だった人もいるでしょう。「公益財団法人日本仏教保育協会」は、仏教に基づいた保育の充実を図り、仏教保育を推進することを目指して昭和4(1929)年に結成され今に至る全国組織ですが、この協会のHPによると、令和3(2021)年度に加盟している仏教系幼稚園の数は494、保育園は389、認定こども園は143とあって、合わせると1000を超えています。

これらは、仏教系の幼稚園や保育園といっても、特定の宗派の思想や信仰をこどもに植えつけることを目的に教育や保育を行っているわけではありません。もちろん園によって特徴の違いはありますが、日本仏教保育協会の基本方針や「仏教保育綱領」に掲げられているように、仏教保育では「生命の尊重」を何よりも大切にしています。

仏教園では年間行事の中で、お釈迦様にちなんだ行事(花まつり、成道会など)や盆踊りなどのイベントがあるでしょう。仏教保育では、こうした行事を通して仏教や寺院への親しみをもつとともに尊いの心や命への感謝の気持ちを育むきっかけにしたいと考えています。また、日頃から食事をいただく前に、生きているものの命と作ってくれた人の存在に気づいて感謝することも生命尊重の考えと結びつきます。ウサギやニワトリや亀やメダカなどの生き物を飼育することで生き物への愛情や思いやりの気持ちを養ったり、植物を育てながら開花を喜び、花の美しさを感じとり、収穫した野菜を食べて、こどもたちが命のつながりを受けとめていけるように取り組んでいます。

みなさんが将来保育者となってこどもの心を育む活動やその意義を考えるとき、仏教保育の中からたくさんのヒントが得られると思います。