
みなさんは、「子ども」をどのような存在だととらえているでしょうか。子どもの姿を目にすると「かわいい」と感じたり、小さな赤ちゃんであれば「守ってあげたい」と思うでしょう。子どもを、「愛らしく、また弱く守られる存在」として考えている人が多いのではないでしょうか。
歴史的には、子どもは体が小さいだけの「小さな大人(大人の小型版)」と、長い間考えられてきました。そのため、物心がつくようになると大人と同様に働かされ、労働力と扱われていました。
このような子どもへの見方に変化をもたらした人物として、哲学者のルソーが有名です。ルソーは『エミール』(1762年)という著書の中で、「世の人は、子どもを小さな大人としてしか見ていない」と指摘し、「子どもには特有の物の見方、考え方、感じ方がある」と述べています。このルソーによる子どもの見方の転換は、「子どもの発見」と言われています。さらに、教育学者エレン・ケイは、1900年に『児童の世紀』を刊行し、教育によって子どもの権利が保障される重要性を説きました。
第二次世界大戦後、子どもの権利については、1959年に国際連合が「児童権利宣言」を採択しました。この宣言では、子どもを「身体的及び精神的に未熟であるため、その出生の前後において、適当な法律上の保護を含めて、特別にこれを守り、かつ、世話することが必要である」と位置づけ、「人類は、児童に対し、最善のものを与える義務を負うものである」と、子どもの権利を護ることを謳っています。さらに、1989年には「児童の権利に関する条約」が採択されました。この条約の大きな特徴は、子どもを単に護られる存在ではなく、権利の主体者として位置づけている点です。この条約により子どもはその年齢や成熟度に従って自己の権利を行使することもできる存在だと広く認識されるようになりました。
子どもの権利が護られるためには、子ども自身が「権利を持っていること」や「その権利を行使できること」を知ることが必要です。子どもの福祉の分野では、子どもの権利を護るための様々な取り組みが行われています。その一つが「子どもの権利ノート」です。子どもが児童養護施設等に入所する時に渡し、施設での生活や生活の中で保障される権利について説明をします。重要なことは、子どもが自分自身の権利を理解することですから、当然子どもの年齢に応じた「子どもの権利ノート」が作成されています。例として、鳥取県の「子どもの権利ノート」を紹介します。鳥取県では、乳幼児版、小学生版、中高生版の3種類の「子どもの権利ノート」を作っています。ここでは、〈はじめに〉の部分を見てみましょう。
【乳幼児版】 せかいじゅうで たったひとりの あなたに このノートをおくります |
【小学生版】※漢字にはルビがふられています 「あなたは、ひとりのたいせつな人間です」 |
【中高生版】※漢字にはルビがふられています あなたは、ひとりの大切な人です。 |
(鳥取県 https://www.pref.tottori.lg.jp/297390.htm)
保育者は日々の子どもとのかかわりを通して、子どもが自分らしく成長発達することや、幸せに生活することを支える存在です。子どもの権利を護るだけではなく、子どもが年齢等に応じてその権利を行使できるように、子どもに「権利」をどのように伝えていくのか考えていきましょう。