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研究室レター

ごっこ遊びと子ども

利根川 彰博准教授
専門
子ども学
保育学

みなさんは幼い頃、ごっこ遊びを楽しんでいたでしょうか? 「ごっこ遊びが大好きで、毎日のように家族ごっこを楽しんでいた」、「通っていた園でやったお店屋さんごっこの体験をよく覚えている」、「ごっこ遊びをした記憶は、ほとんどない」……人によってさまざまでしょう。
 幼稚園、保育園、認定こども園などで、子どもたちの遊びの様子を見ていると、目の前にある現実世界とは異なるウソッコの世界を創り出して仲間と共有し、即興のストーリーを展開してごっこ遊びを楽しんでいる姿に出会うことも珍しくありません。
 もちろん、子どもたちは何もないところで「想像力」だけを頼りにして、ごっこ遊びの世界を立ち上げているわけではありません。手がかりとして、身の回りにあるモノを活用したり、モノから刺激を受けて発想したり、自由に活用できるモノなどの環境があることが重要です。
 子どもたちが夢中になっているごっこ遊びをじっくり見てみましょう。すると、モノをそれにふさわしく操作したり、ウソッコであるイメージの内容(“自分は誰なのか”“ここはどこなのか”“これは何であるのか”など)を仲間たちと共有するための適切なコミュニケーションをはかったり、どれほど高度な力を発揮しているかということに気づきます。一見、「ワハハハ!」「ガハハハ!」と下品な笑い声をあげてふざけているようだとしても、です。
 また、「お医者さんになる」「電車の運転手さんになる」など、「何者かになる」という姿からは、「世界を知るためのごっこ遊び」という側面も見えてきます。その子どもを含む、私たちが生活するこの世界の中にはいろいろな人がいます。その子どもが「医者」や「運転手」などに「なっている姿」は、その子どもが今、この世界のどんな存在に興味を持ち、憧れているのか、知りたがっているのか、ということの反映とみることができるのです。つまり、ごっこ遊びを通して、「お医者さんになってみる」ことを通して「お医者さん」を理解し、「運転手さんになってみる」ことを通して「運転手さん」を理解するわけです。ですから、「カマキリ」に興味を持った子どもが「カマキリになっている」姿も珍しくありません。人間以外のものに興味・関心が向けば、動物や昆虫、恐竜や電車、自動改札などなど、大人が想像もしないものになったりもします。
 さらには、「今ある世界を理解する」だけでなく、「まだ実現していないものを創り出す可能性を試している」という側面も、ごっこ遊びには見ることができます。「現在」を理解するだけでなく「未来」を創り出そうと試すわけです。
「それって、どんなこと?」と興味が湧いてきたとしたら、ぜひ、その先を一緒に学んでいきましょう。